かなりブラックよりな家族経営のお店で働いていた時、そこの二代目社長は運が良い人だと思っていた。
正直に言うなら悪運が強い人だと思っていた。
商売人の母親から会社と顧客をもらい、都会の一等地のショッピングモール内にお店を構え、自分の子供も母親の支援で良い学校に通わせ、人から「すごい」と尊敬されるポジションにいる。
一度も社会を経験せず。
その身の上だけでもかなり恵まれていると思うのですが、不思議なことに、売上に困った時必ず助けてくれる人が現れるんです。
毎月決まって月末になると「数字が足りない」と騒ぎだし、支払いができないと慌てだすと、ふらり、と入店してきたお客様が大きな金額の商品を買ってくれたり、先代の常連さんから仕事の依頼をもらえたり、電話の問い合わせから大口の注文がもらえたりする。
経営者であることのプライド以外持ち合わせていなくて、お店にもお客様にも仕入れている商品にも愛情がなく、ただ毎日「簡単にどこかからお金が入らないかな」って願っているだけの経営者なのに。
ご先祖さまに守られている
おかしい。
ありえない。
めっちゃ性格悪いのに。
お客さんも商品も大事にしてないのに。
なんでこんなツイているんだ。
”ツイてるツイてる”とも”感謝します愛してる幸せです”なんてツイてることを引き寄せる人にありがちなワードすら言ったことがなく、不平不満や体の不調や、お客様やライバル店を見下して馬鹿にした発言しかしない人なのに。
おかしい。
よっぽどご先祖様が徳を積んだのだろう。
よっぽど徳の高い守護霊さまに守られてるのだろう。ずっとそういう風に考えるしか納得がいきませんでした。
経験をさせてもらえず可哀想!?
先代社長の妹さん(社長の叔母)も同業種で現役バリバリに働いていて。
私はその叔母さんにこっそり頼まれて休みの日にたまに叔母さんの店舗のお手伝いをしていまして。
叔母さんと社長はイベントを共同で企画したりもするのですが、普段はあまり仲が良くないので私が叔母さんのお店に行っていることは社長には内緒にしています。
社長の愚痴を聞いてもらったり、昔から中途半端なとこが嫌いって話を聞いたりしていたので、ある時、「社長はぜったい何かに護られている」って話をしたところ、
叔母さまはポツリと、
「経験させてもらえないのよ」とつぶやきました。
えっ?っと聞き直した私に、
「経験させてもらえないから可哀想なのよ」
ともう一度同じことを教えてくれました。
そういう人は苦しい経験をさせてもらえないまま人生を過ごしていくからずっと学ばないままなんですって。
学ぶことすらさせてもらえないんですって。
運が良いことが成長を止めているなんて皮肉な話ですね。