カップのキングの一般的な説明
「カップのキング」は、小アルカナ・スート「カップ」（感情・内面・人間関係）に属するコートカードの一枚で、「キング（王）」のランクが持つ[統治・成熟・責任]の意味とカップが持つ、感情・共感・直感の意味が合わさったカードです。
このカードは、感情の海を航海する船の船長のように、自身の心と他者の感情を見事にコントロールし、導く能力を表しています。「感情・創造・無意識の領域を制御しうる成熟した状態」を象徴します。
感情的に成熟した支配者であり、穏やかで知的な男性性を体現しています。感情的な嵐に見舞われても動じず、その深い共感と理解をもって周囲の人々に安心感を与えます。芸術や学問にも造詣が深く、情緒的な豊かさを人生の知恵に変える力を持っています。彼は慈愛深く、決して感情的にならず、常に安定した精神状態を保ちます。
つまり、ただ感情に流されるのではなく、感情を理解し、調整し、適切に扱える状態がこのカードのキーメッセージです。
カップのキングのカードに描かれた象徴
カードには、豪華な玉座に座り、右手にカップ（杯）、左手に王杖（意志または権杖）を持っている王が描かれています。背景は荒れた海や船、魚・イルカなどの水生モチーフが描かれており、水＝感情・無意識の象徴です。海に浮かぶ小舟や魚は、感情の流れ・無意識の領域・試練や動揺の中でも保たれる平静や、冒険心を示唆しています。
ライダー版（ウェイト=パメラ版）タロットカードの製作者であるアーサー・エドワード・ウェイトは、「彼の玉座は海の上に置かれ、片側には船が浮かび、もう片側にはイルカが跳ねている。カップのサインが水を表すことは暗黙の了解であり、これはすべての（杯の）コートカードに現れている。」と、記述しています。
海の上の玉座は、感情を支配し、深い感情にも溺れることがないことを示し、船(ship)は旅やビジネス、現実世界での活動を示しています。
イルカ(dolphin)は、知性、喜び、そして救済や、無意識からの導きを象徴する神聖な生き物といわれています。そして、イルカや魚は、初期キリスト教の象徴（ギリシャ語の「魚: ΙΧΘΥΣ」が「イエス・キリスト、神の子、救世主」の頭文字となる）と関連されることも多く、カップのキングの精神的な救済をもたらす宗教者としての役割も感じられます。
コートカードは「重要参考人」！？
タロットの世界では、大アルカナが「運命の転機」、小アルカナ（数札）が「日常の具体的な出来事」を示します。
では、コートカード（人物札）はというと、それは、あなたの人生に関与している登場人物、または重要な情報をもたらすキーパーソンを表しています。
時にロールモデルとして、時に反面教師として、人生のヒントを与えてくれる存在の彼・彼女らは、あなたの身近にいる人物かもしれないし、また、主人公自身が黒幕だった映画のように、自分自身を象徴している場合もあります。
コートカードの4つの読み方
コートカードは、次の4つの観点から読むことができます。
① 実際の人物：周囲の特定の人
② 状況：カードのエネルギーが反映した状況
③ 成熟のレベル：エネルギーの段階（ペイジ＝未熟、キング＝成熟）
④ 自分の内面：あなたの本心・今の気持ち
これらの観点から、カップのキングを解説していきましょう。
① 身近な人物としてのカップのキング
このカードが人物として出たときは、穏やかで思慮深く愛情の深い安定した男性を指し示します。以前の記事で、私はこのカップのキングに「悟りを開いた住職」というあだ名を付けました。彼は情緒的に安定し、感情をうまく扱える大人の男性（またはそのような性質を持つ人）」である可能性があります。
優しく、共感力が高く、安らぎを与えてくれる人で、リーダーシップを発揮する際も、感情的にならず、慈愛をもって人々を導くことができる人物でしょう。例えば、言葉よりも行動に優しさを感じたり、じっくりと関係を築こうとしている人かもしれません。
もし他の人を占っている時は、「このカードは、あなたの人生において影響力を持つ、精神的に成熟した男性を表しています。彼は非常に信頼でき、あなたの感情的な問題に対しても、冷静で優しい助言を与えてくれるでしょう」と、具体的な役割を担う人物を伝えてあげるとよいでしょう。
そして、「この方はあなたの感情を大切にしてくれます。あなたが今頼るべきは、感情的にならず、深い愛情と知恵で導いてくれる、年上の男性（父親、師、上司など）の可能性があります」と、助言を添えると効果的です。
もしこの人物との関係を進めたいなら、あなたが安心して心を開けると、この人の本領が出てきます。
② 状況としてのカップのキング
このカードが状況を示している場合、感情的な平和と安定、または専門的な知識や芸術が活きる状況を示します。
自分自身を占っている場合は、あなたの周囲の状況は非常に穏やかで、安定した状態にあります。人間関係においては、深い相互理解と信頼が築かれており、恋愛関係ならば、以前は喧嘩やが多かったけれど、最近ふたりとも相手を思いやるようになってきた、という状況です。
他の人を占っている時は、「あなたが今直面している状況は、安定した基盤の上にありますが、感情の波に飲まれず、常に公平で落ち着いた態度を保つこと」と、心の持ち方を強調して伝えましょう。
今は“感情をぶつけ合う段階”から、“理解し合い、支え合う段階”に移行しています。あなた自身も、自分の気持ちを穏やかに伝えてみてください。
③ 成熟のレベルとしてのカップのキング
コートカードには、次のような成長の流れがあります。（※諸説あり）
ペイジ → ナイト → クイーン → キング
「カップのキング」は、感情的な知性の最高峰と、愛をコントロールする能力の達成を示します。このカードが示す成熟のレベルは、「感情をコントロールできる成熟」です。感情に振り回されず、自分の核（価値・信念）を持つ。共感・理解・優しさを持ちつつ、決断や行動ができます。
海外のタロット解説でも、「感情のマスター」と紹介されることがあります。自身の感情はもちろん、他者の感情すらも理解し、受け入れ、導くことができるレベルに達していることや、感情に流されることなく、深い慈愛と人生経験に基づいた知恵をもって状況に対処できる、真の精神的リーダーの段階にあると解釈できます。
他の誰かを占っている場合は、相談者に「あなたは今、冷静に自分を見つめ直せる段階に来ています。そのままの優しさを強さに変えて行動に移すことが次のステップかもしれません」と伝えてあげるのがよいでしょう。
④ 自分の内面としてのカップのキング
このカードが自分自身の内面として出る場合、「あなたの内面に心の平和が育ちつつある」というサインです。
具体的には、
・あなたは既に感情的なマスター
・必ず冷静な答えが得られます
・過去の苦い経験も成功に活かす準備ができています
・直感を信頼し、判断や行動できます
・他人の気持ちにも寄り添える余裕があります
など、自分の心の中に、海のような静けさと、周囲の感情を受け入れる広さが育っている時です。この時は、自分を責めず、優しさを盾ではなく原動力として使うように心がけてください。そして、自分が感じたことをどう活かすかに目を向けるようにしましょう。
逆位置の意味としてのカップのキング
逆位置でこのカードが出た場合には、キングの持つ安定性や支配力が失われ、感情が制御不能になっているかもしれません。たとえば、感情に振り回されてしまい、心の内側にあった嫉妬や怒りが表に出てしまいます。
また、他人に依存してしまったり、他人の気分に巻き込まれやすかったり、信頼を逆手に使い、他人を操作してしまう可能性も考えられます。
行動がブレやすい時ですので、他人に対してヒステリックになっていたり、冷酷になっていると感じたら、まずご自身を癒すことを忘れないでください。
このカードが出たときのアドバイス
・愛情を持って冷静に対処する
・あなたが動じないことが安心を与える
・経験と知識に基づいて判断する
・他人の気持ちに寄り添ってみる
今、あなたの中には深い慈愛と安定した精神力があります。その深みを信じて、大事な決断や行動をしてください。
関連するカード
・カップのクイーン：感情・共感の成熟
・皇帝：支配力、権威、構造の安定
・節制：バランス、調和、冷静な自己コントロール
カップのキングは、情緒的な安定、寛大さ、そして精神的な成熟を象徴するカードです。「支配」や「調和」など、他のカードと共通する部分もありますが、カップのキングは、感情の波を乗り越えた穏やかな知恵と、人を包み込むようなより温かい権威という側面があり、「感情の成熟・統治・安定」の最終段階にあることが分かります。これを意識してリーディングに取り入れると、より深い理解につながると思います。
まとめ
「カップのキング」は、感情的な知性と精神的な安定が最高度に達した状態を象徴します。他人の感情にも配慮しながら、行き当たりばったりではなく、感情と直感を踏まえて判断・行動できる「悟り開いた住職」のようです。
このカードに出会った時は、あなたが感情の波を支配し、愛と平和と知恵をもたらすリーダーの器あることを示しています。「情緒的な知恵・共感・安定」を持ち、それを使って穏やかに人生を進んでいける、というメッセージなのかもしれません。