タロットカード『18.月』の物語
月のカードには夜空に浮かぶ月と、それを見上げる動物達が描かれています。月は直感、夢、無意識の象徴です。月の光は太陽の光を反射し輝いていますが、この月のカードの(現実的ではない)象徴的な月は、神聖な世界の叡智を反射して輝いているといわれています。
奥にそびえる二つの塔の間を行くと、まだ誰も見たことのない未知の世界へつながっているといわれ、手前の犬と狼とザリガニはその道の前に立った時の自然な恐怖心を表しているようです。

ライダー版(ウェイト=パメラ版)タロットカードの製作者であるアーサー・エドワード・ウェイトは、この精神世界の月を“観察者の右側、いわゆる慈悲の側に月が増えていることである”と、生命の樹の三つの柱の右側の「慈悲の柱」に重ね合わせて説明しています。

これから満ちていく月なんですね!
月を見上げている動物は、右の狼が「動物的本能」を、左の犬が「理性や社会性」を表しているといわれることもありますが、ウェイトは、深淵から這い上がってくるザリガニのようなものを“野蛮な獣よりも下等な、名もなき醜悪な”生き物であると表現しています。
そしてそのザリガニのような怪物は、“水の淵から陸地へと這い上がることに象徴されるように、顕在化を達成しようと努力するが、原則的には、元来たところに戻って沈んでしまう”と、潜在的な不安や恐怖心が表面に現れても、原則的には潜在意識の中でしか存在できないために、意識の奥へと帰っていくことを説明しています。

ザリガニ!陸にあがらないでほしいですね!
正位置のキーワードから連想する
月/ムーンのカードが正位置の場合、
不安、恐怖、幻想、直感、不確実性、混乱、秘密、無意識、などを象徴しています。
この月のカードは、不安や恐怖を表し、過去の経験から予想された未来へ恐怖を投影しているときによく現れます。思い出したくない記憶や、潜在意識の奥深くに押し込んでた感情が再び現れ、意識的または無意識的にその影響を受けているのかもしれません。
この月のカードのイラストには、16本の長い光と、同じく16本の短い光、合わせて32本の光線を放っています。そしてその下には塔のカードにも描かれていた(神の手を表す)ヨッドの形の光が舞い降りています。
32本の光線は生命の樹のセフィロトとパス(小径)の合計数を示しているといわれていて、これは、ここで起こる現象も偶然に起こったのではなく、神の介入があったことを暗示しています。

正位置の月/ムーンの占い解釈例
運気が不安定です。慎重な行動が求められる。
曖昧な関係性に注意。距離を置くことも重要。
誤解や疑念が生じやすい時期。冷静な判断を心掛けて。
状況を把握できず誤解がうまれる。報連相を忘れずに。
イエスかノーかで判断すると….
NOでしょう
☆YES・NO一覧表はこちら
逆位置のキーワードから連想する
月/ムーンのカードが逆位置の場合は、
裏切り、秘密がばれる、偽りに気付く、誤解が解ける、という意味になります。
月のカードの逆位置は、あなたが最近混乱や不安、自己欺瞞と戦ってきたことを示しています。月の闇の部分が否定的な側面となって、あなたの人生に影響を及ぼしています。不幸や混乱の中、何をするのが正しいのかわかりませんが、自分の気持を誤解していたことに気付くかもしれません。
タロット占いの最中に、カードが逆位置(上下逆さま)で出た場合、そのカードの持っている意味や解釈が変わってきます。一般的には「意味が反転する」「意味が弱まる」「エネルギーが過剰になる」など、さまざまな解釈や理解があります。例えば、「歓喜」という意味の場合には、
正位置 | 反転(逆) | 弱まる(逆) | 過剰(逆) |
---|---|---|---|
歓喜 | 失望 | ささやかな喜び | 陶酔 |
このように、嬉しさが失望や落胆に変わったり、ちょっとした嬉しさ程度の意味になったり、現実が見えなくなるくらい快楽に浸る、というような可能性を持つカードの解釈になってきます。

逆位置の月/ムーンの占い解釈例
隠れていた問題が明るみに出る。金銭管理を見直す好機。
誤解や不安が解消され、関係が安定に向かう兆し。
曖昧さが解消され、本音で向き合う機会が訪れる。
混乱していた状況が明確になり、進むべき道が見えてくる。
月/ムーンのカードの問いとインスピレーション
タロット占いで月のカードに出会うということは、私たちは、意識と無意識、飼いならされた従順な犬の側面と、狼に象徴される自然の本能的な力の間で、反射された知性の光の中を歩いていることを表しています(つまり、とても不安で不安定、ということですね)。
このカードと出会い「タロット 月 意味」など、思わず検索したその瞬間、あなたはどんな気持ちで、どんなことを占っていたのでしょうか?
真剣な答えを求めて?
背中を押してほしくて?
自分の気持ちを確かめたくて?
解釈の答え合わせをしたくて?
もしかすると、あなたがこのページに辿り着いたのは、偶然ではなく、カードが「ちょっと立ち止まって考えてほしい」と、あなたに語りかけているからなのかもしれません。
ならば、カードに代わって私から問いかけさせてください。
あなたの直感は何を伝えていますか?
月/ムーンのスキルとアドバイス
タロット占いをしている時、「大アルカナ」は私たちに「スキルを問いかけてきている」と思っています。そして、そこでリーディングした問いや技術は、タロット占いを繋いできた人々の百年の知恵であり、人生を生き抜くための至高のアドバイスであると感じています。
では、月のカードの持つスキルとは何でしょうか?
それは、「不安を沈める技術」だと思うのです。
月のカードは、不安や迷いの象徴です。ウェイト博士は、「野蛮な獣よりも下等な名もなき醜悪な生き物」である不安や恐怖心が潜在意識の湖から上がってくると表現しました。不安を鎮めることは、この怪物を静かに湖に戻し、不安(という怪物を)を湖に沈めることにつながります。
①【不安の正体を見極める】
まずは、不安の正体を知ることが大切です。月明かりの下では影が大きく見えるように、不安も正体が見えないまま膨らんでしまうことがあります。例えば、試験前に「失敗したらどうしよう」と思うことがあるかもしれません。でも実際には「勉強が足りないのでは?」という気持ちが根本にあることも多いです。そんなときは、具体的に何が不安なのか紙に書き出してみるとよいと思います。
②【自分のペースを取り戻す】
月のカードには静かな水面が描かれています。心を落ち着けるには、この水面のように自分のペースを取り戻すことが大切です。不安を感じたときは、深呼吸をしてみましょう。ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐く。それだけで心が少し落ち着くと思います。また、散歩やお茶を飲むなど、自分に合ったリラックス方法を見つけておくのもおすすめです。
③【安心のサインを探す】
月のカードに描かれている道は、暗闇の中でも続いています。不安を感じたときは、自分を安心させてくれるサインを探してみましょう。例えば、「困ったときには助けてくれる友達がいる」「過去にも同じようなことがあったけれど乗り越えた」など、小さな安心材料を見つけることで、不安は少しずつ和らぐと思います。
④【月明かりを信じ行動する】
月明かりはぼんやりしていますが、確かに足元を照らしてくれます。不安が強いときは、完全に解決しなくても「今できることだけに集中する」と決めるのも一つの方法です。たとえば、「とりあえず目の前の課題を5分だけやってみる」といった具合です。少しでも前に進めば、不安は次第に小さくなると思います。
ウェイト博士は、「Peace, be still; and it may be that there shall come a calm upon the animal nature, while the abyss beneath shall cease from giving up a form.(静かに、平和であれ。そうすれば、動物的な本能に穏やかさが訪れ、深淵は形を成すことをやめるかもしれない)」とも語っています。心を落ち着けることで、不安が生まれる根源さえも静まるのです。
月のカードは、不安を感じるのは悪いことではなく、進むべき道を見つけるチャンスだと教えてくれています。不安を沈める技術を身につけることで、あなたの心もきっと穏やかになると思います。