占い師として活動する場は、今の時代、本当に多様になってきました。対面鑑定はもちろん、電話やメール、さらにはSNSを活用した発信まで──占いを通して人とつながる方法は、年々広がっているように感じます。
私もかつて、5年ほど無料で占いを提供していた時期がありました。占いや相談に価値を感じていない方のご意見を聞かせてもらえたり、金銭的な余裕のない方などにも占いを通して少しでも心が軽くなってもらえたら──そんな思いで続けていました。だからこそ、追加で料金の提案をしたり、自分の他のサービスの案内をすることも一切ありませんでした。
知人の知人や、飲み屋で出会った人、無料のサイトやSNS、このサイトの中でも、多くの出会いの機会をいただきました。心の中にある悩みを丁寧に打ち明けてくださる方もいれば、やがて占い師として羽ばたいていかれた方もいて(今や私よりも売れっ子です笑)。特に、LINEで連絡先を交換したり、占いとは別件のお仕事をいただけたり、占い講座を開催したり、今でもご縁が続いている方がいらっしゃるのは、無料での占いやってみてよかったと思える出来事でした。

しかし人生の先輩や、先輩占い師の先生方に「無料占いはやめておけ」という否定的なご意見をいただくことが多く、当時の私は、「こんなに楽しいのになぜだろう?」「こんなに感謝してもらえるのに」と不思議な気持ちでいました。
ありがたいことに、その時の私は、本業で販売していた数千万円の大きな契約が決まり、働かなくても数年は贅沢できる、というくらいの資産を築いていました。ペンタクルの10状態ですね(笑)。

ですので、出会った人から料金を頂くつもりはまったくなく、今まで集めた占いの知識を役に立てる、という好奇心だけでいろいろと試行錯誤をしていました(占われることに慣れている人も多く、悩みのプロセスや質問の内容がまとまっていたりして、返答の勉強になることも多かったです)。そんな中でも、やはり占いというサービスの特徴として、「長年の悩みが軽くなった」というような場面に立ち会うこともあります。そのような時には、どうしても受け取って欲しい、と対価をありがたく頂戴することもありました。

また、一方で、少し切ない経験もありました。自分からお支払いの意思を見せてくださったものの、突然連絡が途絶えてしまった方もいました。金銭を受け取るつもりはなかったのですが、数千円の報酬の提案をお断りするのも無礼かな、と思い、いったん受け取らせてもらってから、こちらから何かの形でお返ししようと思っていました。しかし、いろいろと理由をつけられ、連絡が途絶えてしまいました。
無料が繋いだ縁であるがゆえに、「責任」や「感謝」の質の違いを感じた瞬間でした。お相手の方の生活がうまくいっていないことは分かっていましたので、「後払い」という形でお受けしてしまったのがいけなかったと思います。
普段、販売店のサポートでお店の店頭に立っていると、通常価格の時のお客様と、セールの時期のお客様の違いを感じることが多くあります。不思議と30万円のものを定価で購入された方より、セールなどの時に半額以下で購入された方の方がクレームが多くなる傾向にあることを感じます。
それは提供する占いの価格でも起こる現象なのだと実感しました。

今振り返ってみると、「無料」は入口としてはとてもやさしい。しかしそれは提供する側の、”責任感を感じなくていい”という甘えた気持ちにもつながる可能性があります。そして、それにすがるような形になってしまった誰か罪悪感の中へ連れていってしまうこともある、と複雑な思いが残ります。
私が“数千円だから”と後回しにしてしまったせいで、結果的に相手の支払いを逃れるという不正行為を助長してしまった形になってしまいました。私の甘さのせいで他人に罪を作らせてしまったことが、一番の「無料占い」のあり方を後悔しているポイントになります。
力試しに匿名で占う、善意で自分の能力を提供する、集客のためのサービスとして行う、無料占いにはいろいろな形があると思いますが、誰かの倫理観を試すような状況を作り出してしまわないように注意をしていきたいと思います。
占いは、人の心を照らすもの。明るい場所には、良心や救いだけではなく、悪意や貧しさなど、様々な思いが集まります。だからこそ、そのやりとりにも、お互いの気持ちがきちんと循環する関係性でありたいと、今は強く思っています。