タロットカードの小アルカナは成長のストーリーだとよく言われます。その絵柄が象徴する意味や物語はよく語られますが、そこに登場する人物の意見を推測したことはありませんでした。
登場人物たちに話しかけ、相談すると、どんな風に答えてくれるのかな?と気になったので、勝手に自分の妄想のワンドの世界の方々にお話を聞きに行ってみたいと思いました!
ワンドの人物に話を聞いてみる
せっかくならそれぞれにお悩みを相談したいので、お悩みをお持ちの晴子さん(仮名)にお越しいただきました。
晴子さん、よろしくおねがいします!
よろしくおねがいします。
では晴子さんのお悩みをお聞かせ頂いてもいいですか?
「はい。コロナ禍でマスク社会になったことや、新年会や歓迎会などのコミュニケーションがとれる機会が減ったことで、日頃からうまく自分の話が通じているのか不安になることが多くなりました。出会いの場も減ったので、休みの日も一人で過ごすことが多くなり、街を歩く家族連れやカップル達を見ると羨ましくも恨めしくも思ってしまいます。」
晴子さん!!お話してくれて、ありがとうございます。
お悩みを整理させてもらうと、
1・コミュニケーションを円滑にしたい
2・友達や恋人候補との出会いが欲しい(楽しいなら)
ということになりますかね?
では、さっそくワンドの世界の人たちに聞きにいきましょう!
ワンドの世界へレッツゴー!!
ワンドのエース
勢いに任せてジャンプしてワープした丘の上。しばらく待っていると、突然ぽわーんと光る大きな手が空に現れた。その右手はエネルギーの象徴である棒を握っている。
今私達はワンドのカードの世界の中にいる。さっそく棒を持ってぽわぽわ光る白い手に質問してみる。
「あのー。突然ですけど。人のリアクションが気になって話をするのが上手くいかない気がするんですーー!どうしたらいい人達と出会い、いい関係を築けるでしょうかーー?」
手の主の声がどこからともなく聞こえてくる。
「この棒には野心や情熱、いろいろな欲望のエネルギーが詰まっている。」
現れたばかりの白い手は、ゆっくりと薄くなりながら答える。
「持ってるよー。すでにあなたは持ってるよー。抑えられない気持ちを握ってるよー。創造のエネルギーはあなたの中にある・・・」
白い手は喋りながらどんどん薄くなり、そう言うと完全に消えてしまった。
・・・
はるこさん。
持ってるんですって!なんか分かんないですけど、良かったですね!
・ ・ ・
とりあえず次行きましょ!!
ワンドの2
白い手が消えると、ぐわわッと世界が変わり、赤い帽子の男性が目の前に現れた。赤いマントをした彼は、片方の手には地球儀を、もう片方の手には長めの棒を握り真っ直ぐに立て遠くの海を眺めている。赤いマントの背中側にも棒が一本固定されている。
こんにちはと声をかけ、すぐに「突然すみません!人の反応が気になって会話が上手にできません!良い関係を築けるコツみたいなものをお教え願えないでしょうか?」と悩みを伝えてみると、
「君には野心があるか?人と信頼を築いて何がしたい?どこに行きたい?恋をして家庭を持ってどうなりたい?まずは自分の望みを、大きく遠く見渡してみるといい。」
背中越しに語り始めた赤マントの紳士は、続けて
「私には野望がある。野望を叶えるための行動を考えているところだ。」
と静かにいうと
「目標を定めなさい。」
と言葉を残して早々に消えてしまった。
ワンドの3
その場に取り残され呆気に取られていたが、ゆっくり目の前が暗くなり、ぐわわ、と白い光に包まれ、また場面が変わる。目の前に緩やかな丘が現れたので、気を取り直して登ってみることにした。
晴子さん大丈夫ですか?
大丈夫です・・
しばらく歩くと、今度は赤いマントの人が金色に染まる丘の上で海を眺めている。地面には差し込まれたような3本の棒。その一本を支えにして立っている。さっきの赤いマントの人だろうか?それにしてはさっきより赤いマントが鮮やかになっているし、髪留めや装飾品もオシャレになっている気がする。
晴子さんのために同じ質問をしてみる。
「人のリアクションが気になって話をするのが上手くいかない気がするんですーー!どうしたらいい人達と出会い、いい関係を築けるでしょうかーー?」
すると赤いマントの男は少し饒舌に喋りだした。
「俺は今、自分の目標通りにコトが運んでいる。それを運だと言うやつもいるが、ある程度は俺の心の中イメージ通りにコトが動いていた。そうなって、俺は気が付いたことがある。この欲望というやつは一つ達成すると二つに増える。二つ達成したらまたさらに追加される。果ての見えない終わりなき欲望。俺はこの欲望を集められるだけ集めてみたくなった。それが俺の使命ってヤツなんじゃないかと思い始めてきたよ」
赤マントの男は成功していた。貿易なのか政治なのか、はたまた戦争の指揮をとっていたのかは分からない。ただここに来るまでに様々な経験をしたのであろうことは、熱い自分語りから伝わってきた。ここからは見えない左手には、まだ地球儀を持っているのだろうか?
晴子さんはどうしたら・・?ともう一度問いかけてみた。
「恐れは慎重さを生む。でも、うまく行くためには失敗が糧となる。上手くいかないことよりも上手く行った成功体験を重ねることが大事なものさ。そいつに連れられてこの世界に来ている勇気が、あなたにはある。大丈夫。思いの通りに会話を重ねて、つまらないやつは捨てろ。残ったものが君のワンドさ。ふっ。」
赤マントさん・・・結果を出してちょっぴり調子に乗っているような気もするけれど。
ありがとうとお礼を言おうとしたが、すでに彼の姿は消えていた。
晴子さーん、
もう一軒行きましょ!もう一軒!
ワンドの4
みんな勝手なタイミングですぐに消えていくなあ、、と思っていたら、またいつのまにか場面が切り替わり、さっきまでの雲は晴れ、私達はポカポカで気持ちの良い午後の陽気の中にいた。
「おーい」
と声のする方を見ると、
四本の棒に大きなリースが吊るされ、その奥で花束を持ち花冠をかぶった二人組がこっちに向かって手を振ってくれている。パーティーやお祝いごとの帰りかな。それか結婚式の出席者?もしかしてご本人たち?
なんとなく慶事っぽいのでこちらも「おめでとうございまーす」と手を振りかえした。
なんだか忙しそうで申し訳ないけれど、晴子さんのお悩みを聞いてみた。
するとにこにこしながら大声で
「今ねーーー。ちょー浮かれてるからねーー。みんないい人に思えるー。あなたの周りの人たちも案外いい人達ばかりじゃないー?構えずに心を開いてお話してみたらーー?ひとりで不安なら仲間を見つけて一緒に出会いとか探したら良いと思うよーー!そっちはマッチングアプリとかもあるんでしょー?」
「ちょっと参考になるかもしれないのでお二人の馴れ初めを聞いてもいいですかー?」
と尋ねてみると、
「うけるー。でも人の出会いを参考にしてもそれぞれに向き不向きがあるでしょー?愛の形は人それぞれでしょー?自分の落ち着く姿を探したらー?あなたが無理しなくていい場所やスタイルを探したらいいと思うよー」
そう言いながら二人はポカポカで気持ちの良い場所ごと消えていった。
「無理しない姿か・・」
それまで二人に合わせて笑顔だった晴子さんは真顔に戻り、そうつぶやいた。
今までの晴子スマイルは営業スマイルだったのか。
ワンドの5
ぐわわ。と次に場面が切り替わる途中から、遠くで男達の喧騒が聞こえていた。恐る恐る声のする方へ近づいてみると、だんだんと姿が見え始める。花の咲いていない草原で、五人の男達が手に手に棒を持ち喧嘩をしているようだ。
わ。めっちゃ喧嘩してる。でも「くらすぞこら」とか言ってるけど、全然手を出す様子がない。誰も怪我してないし。始まったばかり?てか本気で闘うには間合い近いし棒が長過ぎるし。
とりあえず危ないので
「おーい子供たちー!危ないよぉー。おーい、お嬢さんたちー!」
と声をかけてみた。
すると
「うるせえクソじじい!!」
と罵声が飛んできた。
いけない。わたし、さっきまでぽかぽか陽気にいたので平和ボケしている。じじいって言いやがったのはあの赤い服の小僧かな。チラチラこっちを気にしてる。でも急にやってきた大人が争っている若者を子供扱いしたのは良くなかったな。私が悪かった。非礼を詫びよう。
「おーい。ごめーん。お嬢さんって言ってごめん。映画でよくあるセリフを言ってみたかったの。」
すると若者は棒を振り上げたまま「・・・訓練してるんス」と教えてくれた。
隣のクラスとの争いか、隣町の不良との抗争か、いつか国と国の戦いに参加するための訓練なのか。なんだか深く聞くことは出来なかった。だが、晴子さんの悩みは聞いてみた。
「人のリアクションが気になって上手に話せなくなる時とか君だったらどうする?できれば性格の良い人達と出会って、友達になったり恋人になったりもしたいのだけど。」
そう問いかけると。赤い服の若者は
「生言うんじゃねえ」と若者らしからぬ言葉を放った。
「俺達は今、訓練してるんだ。訓練でも棒は重いし、もし当たったら怪我しちまう。俺達は生まれた場所も育ってきた環境も兄弟の数も違う。親がいないやつや家族がいがみあっているやつもいる。そんな俺達が、重大な戦が起こった時どうやって結束するっていうんだ?考え方の違うもの同士で国や権力と戦うことができるのか?チームワークが悪ければすぐに負けちまうよ。だからこうして自分の全てを晒して闘い、訓練している。」
と言葉を続け、今度は青い服の若者が、
「この中には間抜けなやつもいる、戦略が上手いやつも、卑怯な手を使うやつもいる。こうしてお互いにぶつかり合うことで性格の違いを理解し、分かりあえる。」
と穏やかに言い虚空を見つめた。
「この子達にとっては、ぶつかり合わない、摩擦のない関係のほうが不自然なんでしょうね。わたし、なにか分かったような気がします。連れてきていただいてありがとうございます、もう十分です。」
と晴子さんは言い
「この旅を終えましょう」
と呟いた。
・・・嫌です。
だってめっちゃ楽しいもん!
てか晴子さん!まだ全然分かってないですって!!というより僕はまだまだ分かりません。もっともっと話を聞きたいです。晴子さん、もう一軒行きましょう、もう一軒!!
こうして、私と晴子さん(仮名)のワンドの世界を巡る旅はまだまだ続くのでした。