タロット占いはなぜ当たるのか?
タロット占いはとても良く当たります。
占う側としても、占われる側からみてもそう思います。
しかし、当たらないこともあります。
(当たらないというか、今はまだ違う感…)
なぜ占いにこのような波があるのかと考えてみました。
ギリシャ神話のとても有名なエピソードのなかのひとつ、パンドラの箱の話はご存知でしょうか?
本来は瓶とも壺とも言われていたのが、誤訳によって箱になったそうです。
この開けてはいけない箱を開けた”パンドラ“はそもそもどこからやってきたのでしょうか?
このお話を始める前に少しだけギリシャ神話のお話をさせていただきます。
人類に発展と文明を与えたプロメテウス
ゼウス率いるオリュンポス神族と10年に及ぶ大戦争を繰り広げた巨人族(ティタン神族)の一柱であるプロメテウス。
火の神にして先見の明を持つプロメテウスはティタン神族の敗北を予見、仲間を裏切りゼウス軍への加勢をしたため、ティタン神族でありながら戦争の後にも自由な暮らしを許されていました。
一説によるとこのプロメテウスが赤土と水から人間を創造したともいわれています、
プロメテウスは人間の味方でした。
ある時、この世界を統べる全知全能の神ゼウスを欺き、人類に肉を与えてくれました。(これにより人間は永遠には生きられない、朽ちていく肉体になるのですが)
家の作り方から穀物の育て方、犬を使った狩りの仕方や言葉や文字まで親切に教えてくれました。
そしてとうとう、寒さに凍える人間を哀れに思い、ゼウスから人間に与えることを禁じられていた”火”を天界から盗み人類に与えたのでした。(これにより人類は火を使いこなして武器を作り戦争を始めるのですが)
その罰としてプロメテウスはコーカサス山の山頂に鎖で繋がれ、どこからか飛んできた大鷲に肝臓をつつかれ食べられる、という罰を与えられました。
(不死のプロメテウスの肝臓は翌日には再生するので、3万年ほど鷲につつかれ続けることになります)
痛そう
人類初の女性、パンドラ
それでも怒りの収まらないゼウス神は、人間に厄災をもたらすため人類初の「女性」を作ることになります。
この人類史上初の女性の名前が「パンドラ」なのです。
「パン」は全て、 「ドラ」は贈り物、という意味があるそうで、
美の女神アフロディーテは美と魅力と色気を。
闘いの女神アテナは知恵と織物の技術を。
光明神アポロンは美しい歌声を。
泥棒の神ヘルメスは嘘と狡猾さと好奇心を。
神々はこのパンドラにさまざまな能力を与えました。
そしてこのパンドラをプロメテウスの弟のエピメテウスに贈りました。
先見の能力のある兄プロメテウスから
「ゼウスからの贈り物は受け取るなよ!」
と忠告されていたにもかかわらず、いままで見たことのない魅力的で美しい”女性”という存在に魅了され、エピメテウスは喜んでパンドラを受け入れてしまします。
そしてこのパンドラ、人間界に送り込まれる時にゼウスより「開けてはならない瓶(壺、箱)」を持たされていました。
この開けてはならない瓶を、夫のエピメテウスが出かけているスキに、泥棒の神ヘルメスに与えられた好奇心に抗えずに開けてしまうことになります。
ご存知の通り、この瓶の中には”ありとあらゆる厄災”が入っていました。
ちょっとその厄災をご紹介します。
病気、戦争、貧困、嫉妬、妬み、犯罪、憎悪、苦しみ、悪意、災害、暴力、諸々の災い、あらゆる悪。
あらゆる悪!!
それまで邪悪なもののなかった地上に、このような厄災がばらまかれてしまいました。
しかし、瓶の底には、何かひとつ残っているものがありました。
それは「希望(エルピス)」なのでした。
ですから人類にはどんな厄災にも負けない”希望”があるのでした。
ちゃんちゃん。
という展開になります。
希望が残るってどういうコト?
このお話を聞いて理解できないコトがありました。
「希望が瓶の中に閉じ込められたままなら、希望がないってことじゃない?」
このお話を読む度にそう思っていました。
こうなることを予見していたプロメテウスがあらかじめ底の方に希望を入れておいた、という説もありますが、それだったらやっぱり”希望”は外の世界に出ないと機能しないような気がします。
その当時はギリシア神話を少しも知らない周りの人たちにこのお話を説明し、どう思うか?意見を聞きまわっていました。
ネットで調べろ、ググれ、とリアルで言われる日々でした。(笑)
そうでしょうね
そして「もし瓶の中の希望が外に出ていたら“希望”が”病気”や”暴力”と同列の厄災になってしまうのじゃないだろうか」という考えにたどり着きました。
瓶の中に留まっていてくれたおかげで“希望”は”希望という悪”にならずにすんでいるのではなかろうか、と思いました。(しかしニーチェは「希望こそ苦しみを長引かせる最大の厄災だ」なんて言っておられたようですが)
希望=予兆
実は瓶の中に入っていた「希望(エルピス)」とは「予知や予見」など兆候を感じる予兆の能力のことではないのか、という話があります。(プロメテウスが土と水から人間を作り出した時、あえて人間に予兆の能力を持たせなかったという話もあります)
もしこの”予知や予見という厄災“が瓶の中から、私達の住む世界に出ていたらどうなっていたのでしょうか?生まれた瞬間からどういう風に成長しどういう人生を歩むのかが分かる世界になっていたのでしょうか?
恋人の顔や子供の顔、親の死ぬ顔まで分かるのかもしれません。
(この先、一生恋人はできないよってことが分かったら、私は自暴自棄になりそうです)
どんな病気になりどんな苦労をするのかが先に分かってしまう恐怖。どこまで先が見通せる能力かは分からないですが、人生に張り合いがなくなってしまうこともありそうですよね。
安心を得る未来が分かることもあるでしょうが、そんな人生はつまらない、と感じるような気もします。
それこそ人生に希望がなくなってしまいそうです。
先の見えない不安を感じるってことは、言い換えると未来に希望を持てるってことなのかもしれません。未来を創造できる、変えられるかもしれない、という思い “希望“は、少なくともギリシア神話の中では”厄災ではない”ということなのだと思います。
だとしたら予言や占いは当たるのか
それでも人間は星の位置から天候や災害を予測したり、生まれた日や手や顔の相から運命を探り、偶然のカードの配置から何らかの希望や災いの予兆や兆候を感じる方法を模索してきました。
それは私達人類の父であるプロメテウスが持っていた予見の能力を、知らずに求めてしまっているのかもしれません。
予言や占いが100%の確率で当たらないのはパンドラが希望(予兆)を瓶の中に閉じ込めたままなのだから、仕方がないことなのかもしれません。
そう思うと予言が外れても、ちょっとお洒落に感じませんか?
それでも未来を知りたいと思い占う行為が、美しく愛おしいと思うようになりませんか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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ちなみにこのプロメテウスが火を与えた人間は戦争を繰り返し、神を敬わなくなったため、ゼウスの怒りが限界になり、降り止まぬ大雨と大洪水で滅ぼされます。
パンドラとエピメテウスの娘ピュラはプロメテウスの息子デウカリオンと結婚していて、父親のプロメテウスより大洪水のことを教えられていたために、箱舟を作り生き残り、現在の我々人間の祖先になったともいわれています。