あなたの町の聖地の方角は?古代の天文学と方位の謎
遺跡や古墳、神社仏閣やパワースポットを訪れた時、その建物や石碑がどちらの方向を向いているかに意識を向けたことはありますでしょうか?
たとえば鳥居の先から参道の伸びる方角、そして境内や社殿の向き…。隠された御神体を探るキーになったり、何気ない岩に刻まれた線が、夏至や冬至を知らせたり、重要な天文現象と深く関わっていたりする可能性があるかもしれません。
あなたの街の神社や遺跡が、古代の人々の知恵や信仰、人々の願いや思想、そしてその土地の自然との深い繋がりなどがひそんでいるかもしれませんよ。
南向きの神社が多い理由は、天子南面(てんしなんめん)す?
神社は南向きで建っていることが多いのですが、これは、紀元前8世紀より伝えられていた古代中国の思想が、奈良時代(710〜794年)あたりの日本に入って来た影響だといわれています。古代中国には「天子は南面する」という言葉があり、天子(天皇)は北に座して、南を向きながら政治を執り行うことが通例とされていたようです。
この思想は現代の中国にも残っているようで、円卓の席次を決める際にも、その席の主催者や主客が一番北側の席に南を向いて座るように配慮をしているそうです(例外も多いそうですが)。


日本の上座・下座のような感じですね
■日本の神社を調べてみると、
・伊勢神宮・外宮・内宮
・宇佐神宮
・明治神宮
・太宰府天満宮
・出雲大社(後述)
などなど、多くの神社がほぼ南向きで建てられていることが分かります。

南向きから20度東に傾いた(聖方位)場合は、「シリウス信仰説」もありますばい!
南面してない神社は?
では、南面していない神社には、どんな意味があるのでしょうか?
一説によると、東向きの神社は古い神社に多く、太陽信仰の名残りだとか、北向きは北極星信仰だとか、西向きは朝鮮半島や神宮皇后と関連がある、ということを言われているようです。
しかし、諏訪大社や大神(おおみわ)神社のように、山を御神体山、樹木を御神木として遥拝するように建てられている場合も多くあります。
たとえば、三重県伊勢市にある二見興玉神社の本殿・拝殿は、夏至の太陽が登る方角、海の先の夫婦岩を向いて拝むことができるような方向に建てられています。これは聖なる岩とされる興玉神石が夫婦岩の先の海中に鎮座されているからでもあります。

そして、宮崎県の高千穂にある天岩戸(あまのいわと)神社は、西本宮・東本宮ともに、御神体である天岩戸を遥拝するように、拝殿・遥拝殿が建てられています。

その他にも、神社には珍しく北向きで建てられている東京都・府中の大國魂(おおくにたま)神社は、”永承6年(1051年)に南向きであった社殿を源頼義が北向きに改めた“という由緒がありますし、東向きに建てられている平野神社(京都)は、古代の太陽信仰の名残りなどではなく、かつて平安京の宮中神(平安京の大内裏で祀られていた神々)であった名残りからであると考えられています。
西向き神社の謎
西向きの神社の話をすると、境内にある四本宮すべてが西を向いている、大阪の住吉大社が話題にあがります。これは、神宮皇后に関する朝鮮半島を向いているや、妙見信仰などを言われたりしますが、神社より西にある大阪湾(海の神であるツツノオ三神)に向かって建てられていると考えたほうが自然かもしれません。(ツツノオ三神とは、日本書紀では底筒男命(そこつつのおのみこと)・中筒男命(なかつつのおのみこと)・表筒男命(うわつつのおのみこと)、古事記では底筒之男神(そこつつのおのかみ)・中筒之男神(なかつつのおのかみ)・上筒之男神(うわつつのおのかみ)と表記される三柱の神の総称で、住吉三神とも呼ばれます)
しかし、ここで思い出したのは出雲大社の御神座(ごしんざ・神様の座る場所)のこと。出雲大社の本殿は他の多くの神社と同じように南向き、つまり南面して建っているのですが、その内部にある御神座は西向きに造られているそうなのです(下の画像参照)。

そして、先に紹介した、三輪山を御神体・神奈備(かんなび)とする奈良県の大神(おおみわ)神社も西向きでした。
この西向きの三社のご祭神はそれぞれ、
・住吉神社….ツツノオ三神
・出雲大社….オオクニヌシ
・大神神社….オオモノヌシ
を祀っており、この五柱の神はすべて土着の神である国津神側だったのです!!
※国津神とは?を知りたい方はこちらの記事をご覧ください

国津神と西向きの神社、なにか関連性があるのでしょうか
福岡の神社の向きを調べてみました
私の地元である福岡県福岡市近郊にある神社は、立地環境的に、常に朝鮮半島からの攻撃を警戒していたので、神威にあやかれるよう中国大陸に向けて神社を建てることが多かったといわれています。ですので、福岡県の神社の向きを調べてみました。

福岡市の箱崎にある日本三大八幡宮に数えられる筥崎(はこざき)宮は、境内にある楼門に「敵国降伏」の扁額(へんがく)を掲げているだけあって、朝鮮半島を意識したような方向で建てられていました。
ちなみに、ここでいう「敵国降伏」とは、武力で「敵国を降伏させる」ような意味ではなく、相手を徳の力を持って導けば、外から来る災いは自然と滅びていく、という解釈のようです。

タロットの「力のカード」の解釈のようですね!
それはそうと、他の神社も調べて、画像に落とし込んでみました!

思ったよりバラバラでした(笑)。住吉神社と警固神社は、朝鮮半島じゃなく中国大陸の上海あたりを向いていますね。若八幡宮や櫛田神社の向いている方向も、よく調べると何か理由があるのかもしれません。
誰でも調べられる方角ガイド!作りました
今回は神社を中心に方角を見ていきましたが、古墳の向きや山の中にある巨石、神社に祀られている磐座(いわくら)、などの立てられている方角を調べてみるといろいろな発見があるかもしれません。もしかすると、ただの大きなオブジェと思っていた近所の神社の岩石が、春分や秋分、夏至や冬至の方角を知るために古代に立てられた重要な石という可能性だってあるのです。
いつも私が探検(石碑を巡ったり、キャンプに行ったり)する時に使っている、日の出&日の入の方角の早見表をこちらに置いておきますので、ぜひダウンロードやスクショ、印刷したりして、あなたの冒険のお供に使ってください!

もし、「あれ?この石、冬至の日の入りの方向に線が削ってあるぞ」とかに気がついたら、ぜひぜひ情報をお教えください!もしかすると、古代の魔力のある石かもしれません!

求む!魔力のある石!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!